企業戦略は常にUpdateされているか。茹でガエルにならないための3つの大原則

知の探究
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企業に求められる戦略の質は年々上がっている一方で、現代社会人が戦略について考える機会は年々少なくなっています。これは、企業の構造上、仕方がない面もあります。では、何故、そういう構造になっているのか、そして、その構造から抜け出すためにはどうすれば良いのか、解説していきます。

“戦略”と”戦術”の違いについてのおさらい

まず、構造上の問題点を明らかにする前に、戦略と戦術の違いについておさらいしましょう。

戦略も、戦術も、それ単体では何の意味も成しません。目的があってこその戦略、戦術ですね。

当然ながら企業には、目的があります。資本主義社会の観点から見れば、”継続的に収益を挙げていくこと”が企業の目的となります。

この”継続的に収益を挙げていくこと”に対する長期的な計画が戦略、その戦略に呼応する短期的な行動計画が戦術と言えるでしょう。

“戦略”と”戦術”はツリー構造となっている

ここで、留意しなければならないのが、”戦略”と”戦術”はツリー構造となっている、ということです。

企業は、階層構造となっています。

企業には投資家がいて、経営陣がいて、管理職がいて、一般社員がいます。

便宜上、この企業の指揮命令系統は、投資家 → 経営陣 → 管理職 → 一般社員と、一方方向になっているとしましょう。


各登場人物がどの様に指令を下していくのか、見ていきましょう。

投資家は、手持ちの資産を運用するため、良い投資先を探します。これからIT企業が伸びると思った投資家は、手持ちの資産をIT企業の株につぎ込みます。

このIT企業の経営陣は、自社の強みはサービスラインナップとして人材管理システムにあると思っています。更なる市場の寡占に向けて人材管理サービスの拡充を目指します。

経営陣から指令を受けた管理職は、市場の成長性から、転職市場をターゲットにした人材管理サービスに目を付けました。転職市場に打ち出すため、人材管理サービスの新たなコンテンツの作成を企図します。

管理職から指令を受けた一般社員は、転職市場に打ち出すための人材管理サービスの新たなコンテンツ作成に着手しました。


上記を戦略、戦術に照らし合わせると以下の様になります。

投資家の戦略:手持ちの資産を、投資を通じて継続的に増やしたい。

投資家の戦術:(投資先では、)ITサービスで、企業の収益を挙げてほしい。

経営陣の戦略:ITサービスで、自身の企業の収益を挙げたい。

経営陣の戦術:人材管理サービスの拡充を通じて、市場を寡占したい。

管理職の戦略:人材管理サービスの拡充をしたい。

管理職の戦術:転職市場向けの人材管理サービスのコンテンツを拡充させたい。

一般社員の戦略:転職市場向けの人材管理サービスのコンテンツを拡充させたい。

一般社員の戦術:転職市場向けの人材管理サービスのコンテンツを作る。


“投資家の戦術”と”経営層の戦略”は一緒になるし、”経営層の戦術”と”管理職の戦略”は一緒になるし、”管理職の戦術”と”一般社員の戦略”は一緒になりますよね。(ごく稀に、一致しないこともあります(笑))

戦略と戦術の構造から見えてくること

戦略と戦術がツリー構造だということを理解すると、見えてくることがあります。

戦略から戦術を作るのは、『誰か』、という事です。

それは、当然ながら、各登場人物ですよね。

しかしながら、一般社会ではこれと違ったことが往々にして発生します。

上位職が下位職の戦術を決めることは無いでしょうか。(それが、一概に悪いこととは言えないですが。。。)

上の例で言えば、経営陣が、一般社員の戦術を決めることには違和感があります。

企業のスピード感の観点でも、上位職は下位職の戦術を承認はすれど指示すべきではないでしょう。

第一の原則

第一の原則は、ありきたりですが、以下となります。

(第一の原則)上司は部下の戦術に指示しない。一方、部下は戦術について上司の指示を仰がない。

ツールの利便性が向上すると、戦術の幅が広がる

さて、角度を変えた話をします。

皆さんは、日常生活でツールを使っていますでしょうか。

ドラム式洗濯機、お掃除ロボット、コードレス掃除機など、現代人が使用するツールは、一昔前に比べて非常に便利になっています。

この様に、資本主義社会においては、自然と身の回りにあるツールはアップデートされていきます。

当然ながら、ツールがアップデートされると戦術の幅は広がります。

ツールがアップデートされると戦術の幅が広がる例をマンモス狩りに例えて説明したいと思います。


槍を使う原始人と機関銃を使える現代人がマンモスを狩ることを考えてみましょう。

【槍を使う原始人の戦術】

  • マンモスに真正面からぶつかると負傷者が出る。
  • 負傷者を出さずにマンモスを襲うためには、動きが鈍くなる水辺の近くにいるマンモスのみを襲おう!
  • マンモスの個体数が多い夏場は、負傷者を出さないためにも無理して強い個体を襲わず、弱い個体のみを襲おう。

【機関銃を使う現代人の戦術】

  • マンモスに真正面からぶつかっても、負傷者は出ない。
  • どんな地形にいようとも、マンモスを見かけたらマンモスを襲おう。
  • マンモスが強い個体であろうが、弱い個体であろうが、圧倒的な戦力差があるので、無差別に襲おう。

槍を使う原始人は、”水辺にいるマンモス”、”弱い個体”のみしか襲えなかったのが、機関銃を使う現代人は、それに加え、”水辺にいないマンモス”、”強い個体”も襲える様になりました。

“食料を確保する”という目的に対して、”どのマンモスを襲うか”という戦術の幅が広がっています。


この様に、ツールがアップデート(上記の例では、槍から機関銃にアップデート)されると戦術の幅が広がるのです。

戦術の幅が広がることには、副作用がある

しかしながら、戦術の幅が広がることは良い面ばかりではありません。

槍しか持たない原始人は生死に関わる為、一担当者であったとしても、総合的に物事を考えることが求められます。

水辺にいるマンモスしか襲えないということは、どこに水辺があるのか把握する必要があります。

弱い個体しか襲えないということは、どのマンモスが弱い個体なのか把握する必要があります。

また、槍しか使えないということは、作戦を立てなければなりません。

そして、作戦会議の中で、この時期のこの水場はワニがいて危ないとか、この時期のこの地域にはマンモスの食料が少ないため、必然的に弱い個体が増えるといった、周辺知識が増えてきます。

結果、下位者であったとしても日常業務を進めているだけで、上位者と同等の知識・スキルを習熟することが出来る様になるのです。

一方で、機関銃を持った現代人はどうでしょうか。

マンモスを襲うのに周辺知識・スキルは必要ないため、マンモスを見かけたら襲う、という行動原則さえ守っていれば、成果をあげられそうです。

つまり、槍しか持たない原始人は日常業務を遂行するだけで、俯瞰的な視点も持てるのに対し、機関銃を持った現代人は、ただ、日常業務を遂行するだけでは、俯瞰的な視点を持てなくなっているのです。

第二の原則

ツールの利便性が向上した時代には、ツールが無かった時代と同じ戦術レベルのタスクをこなすだけでは、俯瞰的な視野が身につかないと、言えそうです。

ツールの利便性が向上するに併せ、下位者は”意識して”戦略レベルの思考について首を突っ込んでいくことが求められる様になっているのです。

(第二の原則)ツールがアップデートされると前任者と同じやり方では、戦略思考が身につかなくなっている。自身の上位者が考える戦略について、積極的に首を突っ込んでいくべし。

ツールは常にアップデートしていく必要がある

時代が進むと、ツールは自動的にアップデートされていきます。

第二の原則を考えると、戦略思考が身につかなくなるので、ツールのアップデートは思いとどまった方が良いのでしょうか。

竹やりと機関銃では、明らかに効率が違います。

周りが機関銃を使っている環境下で、自身の集団だけ竹やりを使うのは合理性は無さそうです。(何より、マンモスにやられてしまう危険性を冒す必要はないですよね。)

第三の原則

ツールは常に最新化していきましょう。但し、ツールを最新化するにあたっては、最新化に伴う副作用を認識すべきです。

(第三の原則)第一の原則、第二の原則を把握した状態で、ツールは常にアップデートすべし。

まとめ

現代社会人が組織の戦略について考える機会が年々減っている構造的な仕組みについて、解説しました。現代社会人が使用するツールがアップデートされることに伴い、戦略思考を意識する機会が減る、ということです。

こういう状況の中で、戦略思考を身に着けるためにどうすれば良いのか、三つの原則について紹介しました。

(第一の原則)

上司は部下の戦術に指示しない。一方、部下は戦術について上司の指示を仰がない。

(第二の原則)

ツールがアップデートされると前任者と同じやり方では、戦略思考が身につかなくなっている。自身の上位者が考える戦略について、積極的に首を突っ込んでいくべし。

(第三の原則)

第一の原則、第二の原則を把握した状態で、ツールは常にアップデートすべし。

この三つの原則を意識し、会社組織を元気にしていきましょう!

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